【ギター】6弦楽器という伝統⑤:ギターの常識はホロウボディ?ソリッドボディ
前回はエレキギターの始まりについて、ジャズ音楽シーンからのルーツを辿ってきました。
今回はエレキギターの後の発展について深堀りしていきたいと思います。
アコギに電気を流したホロウボディ
当時は、アコスティックギターの原型をベースに、電気信号に変換するピックアップを搭載しただけの、いわゆるホロウボディタイプのエレキギターが主流でした。
当時から商用エレキギターメーカーの内、リッケンバッカー(Rickenbacker)、エピフォン(Epiphone)、ギブソン(Gibson)などは今も有名ギターブランドとして健在ですね。
ただ、これらのギター、本体もある程度共鳴しやすい空洞な構造のため、スピーカーから出る音を拾って更に増幅してしまうことにより、いわゆる「ハウリング」という騒音の原因となっていました。
ギターの常識を変えたエレクトリック(エレキ)ギター
ホロウボディギターのハウリング対策として生まれたのが、中が空洞でないソリッドボディギター。
かなり初期に造られたソリッドボディギターは、ギタリストでありギタービルダーでもあったレス・ポールによって造られました。
当時1940年代、レス・ポールはこのギターをギブソン社に持っていったところ、売れないだろうと一蹴されます。
ですが、後にフェンダー社によりエスクワイヤーとブロードキャスター(後のテレキャスター)というソリッドボディギターが量産化され、その対抗馬としてレス・ポールがギブソン社によって正式に商品化されます。
フェンダー社は元々ラジオや電化製品の会社として創業した会社ですから、楽器メーカーのギブソン社と比べて固定概念に縛られずソリッドボディの商品化を進めることができたのかも知れませんね。
次回はソリッドボディギターの誕生以降のエレキギターの進化について迫っていきたいと思います。
【ギター】6弦楽器という伝統④:ジャズから生まれたエレキギター
過去2回は、クラシックギターに始まりアコスティックギターとの違いについて実際の演奏者の動画を交えて紹介してきました。
一方で、現代のポップスやロックで最も馴染み深いであろうエレキギターはどう違うのでしょうか?
名前の通り電気を使うか使わないか?
音楽の進化は技術の進化と二人三脚
エレキギターが初めて使われ始めたのは1930年代。
当時、ジャズ音楽シーンにおいてギターはリズム隊という位置づけだったところから、いわゆるビッグバンドジャズというジャンルの台頭と合わせてジャズバンドとは人数編成が大きくなっていきました。
複数のトランペット、トロンボーン、サクソフォンの生音に対して、ギター一本では音量で埋もれてしまい、リズムならまだしも単音で奏でるソロなどは生鳴りだけでは音が小さすぎた訳です。
そんな時代に音を増幅する手段として、電磁石を使って弦振動を電気信号に変換してスピーカーから鳴らすという技術が開発されました。
エレキギターのパイオニア達
エレキギターを使い始めたギタリスト達の中には、後にギブソン社の代表的なモデルであるレス・ポールに名前を継承したレス・ポール(Les Paul)、ブルースギターの巨匠T.ボーン・ウォーカー(T-Bone Walker)、数々のジャズギタリスト影響を与えたチャーリー・クリスチャン(Charlie Christian)などがいます。
チャーリー・クリスチャンなどはまさにビッグバンドジャズの代表格、ベニー・グッドマン楽団でエレキギターを弾いて有名になりました。
Charlie Christian: Stompin' at the Savoy
そんなジャズシーンから生まれたエレキギター、次回はそのエレキギターが遂げてきた進化について触れていきたいと思います。
【ギター】6弦楽器という伝統③:スチール弦のアコスティックギター
前回はクラシックギターが使われてきた音楽ジャンルについて紹介しました。
ではクラシックギターとアコスティックギター、良く似た2種類のギターはどう違うのか?
今日はアコスティックギターについて触れていきたいと思います。
フォークや弾き語りで活躍するアコスティックギター
後に、ナイロン弦ではなくスチール弦を使うようになったのがアコスティックギター。
音楽ジャンルでも、1900年代に入ってフォークやロックなど、現代のポップスでも良く目にするのではないでしょうか。
アコスティックギターと言えば、押尾コータローも影響を受けたと言うトミー・エマニュエル(Tommy Emmanuel)によるソロ弾きなどが印象的です。
Tommy Emmanuel: Mombasa
パーカッションの様なプレイから始まる演奏、メロディと伴奏とベースラインをすべてギター1本で弾くパフォーマンスは鳥肌が立ちますね!
他にも、シンガーソングライターによる弾き語りや、キャンプファイヤーでの歌でも活躍するのがアコスティックギター。
クラシックギターとアコスティックギター、同じホロウボディでありながら、弦の違いや使われるジャンルの違いで表現力の幅が変わりますね。
次回はそれとは打って変わったエレキギターについて深堀りしたいと思います。
【ギター】6弦楽器という伝統②:クラシック音楽がルーツのナイロンギター
前回は、ギターという楽器のルーツから1800年代の原型に至るまでについて書きました。
今回はそんなクラシックギターの特徴について紹介していきます。
名の通り伝統音楽から発展したクラシックギター
ギター自体、現振動がホロウボディで共振して鳴る楽器ですが、クラシックギターの特徴としてはナイロン弦を使った柔らかい音色です。
クラシックギターと呼ばれるだけあって、最初はクラシック音楽の名曲がギター用に編曲されて演奏されていました。
実際、バッハの曲などギターで演奏しても様になりますね。
J. S. Bach
一方、現代音楽だとラテン系の音楽ジャンルでも良く使われており、スパニッシュギター、フラメンコギターと呼ばれることも。
今のギターシェイプもスペインで造られていたギターがベースとなったそうです。
1800年代後半で活躍していたフランシスコ・タレガ(Francisco Tárrega)はクラシックギターの父とも呼ばれ、後のスパニッシュギターに影響を与えたことでしょう。
Francisco Tárrega: Capricho árabe
そんなクラシックギターですが、最近のポップスでも良く見かけるアコスティックギターとは何が違うのでしょうか?
次回はアコスティックギターの特徴と音楽ジャンルについて紹介していきます。
【ギター】6弦楽器という伝統①:文化から辿るギターという楽器
前回は、和楽器として三線と三味線の違いについて紹介しました。
同じ弦楽器の中でも、西洋の6弦楽器のギターについてもいくつか種類があります。
ギターは馴染みあるようで意外と違いを説明できない人も多いのでは?
歴史で辿る6弦楽器
元々ギターという楽器の由来は、リュートという楽器が起源だと言う説があります。
歴史上はバイオリンとギターは並行して発展し、国によってはギターのことを「手弾きのビオラ」と呼んだりしていたとか。
現代のギターの形が定着したのは1800年代後半、スペインのギター職人達によって造られたものが定着。
特に影響を与えたのがアントニオ・デ・トーレス(Antonio de Torres)というギター職人だとか。
それが現代で言うクラシックギター/アコスティックギターの原型となっています。
では、クラシックギターとアコスティックギター、そして後に登場したエレキギター(エレクトリックギター)の違いとは?
次回以降はそれらの違いについて深堀りしたいと思ってます。
【和楽器特集】三線と三味線の違いは?
最近、和楽器や日本の伝統音楽について書いてきましたが、和楽器の中でも世界的に有名なのが三味線ではないでしょうか。
一方で、三味線に良く似ていて異なる三線、この2つの違いって気になったことありませんか?
今日は2つの違いについて簡単に触れてみたいと思います。
沖縄音楽には欠かせない、沖縄で発展した三線
沖縄出身のミュージシャンにも良く使われるのが三線。
この曲のイントロなんかも馴染みがあるのではないでしょうか。
BEGIN:島人ぬ宝
三線は沖縄で発展した楽器で、ニシキ蛇の皮を使うこともあってか現地では蛇皮線(じゃびせん)と呼ばれることも。
現代音楽ではロックやポップスとの融合でギターピックを使って弾く人もたまにいるようです。
津軽三味線でも有名、日本本州で発展した三味線
一時、吉田兄弟によってブームが来たのが三味線。
表情を歪ませて演奏する様子は、どちらかと言うとロックギタリストを彷彿とさせますね。
三味線は、津軽三味線というジャンルがあるくらいですが、日本本州で発展した楽器です。
犬や猫の皮を使ってることが有名ですが、最近では合成皮でつくられてるのがほとんどだとか。
三線と比べて90~100cmと全長が長いのも特徴です。
まとめ:ルーツの違いや音楽性の違いが名称の違い
2つとも弦3本の楽器という点では一緒ですが、主な違いは以下の通り:
- 三線:沖縄から広まり、全長80cm、ニシキ蛇の皮を使用
- 三味線:日本本州から広まり、全長90~100cm、犬や猫の皮を使用
ただ、どちらも中国の三弦(サンシエン)がルーツということで、共通点が多いのも頷けますね。
日本国内だけでも色んな文化があるのを知ると、当たり前に生まれ育った土地に新たに興味が湧くなと思いました。
音楽と文化の結びつき、これからも見つけた時にシェアしていきたいと思います。
海外製の邦楽と和楽器の逆輸入
前回は、日本の現代音楽において和楽器や伝統音楽がオマージュされている例について紹介しました。
一方で、海外ミュージシャンが日本の和楽器や伝統音楽を取り入れてるケースも珍しくありません。
日本音楽を愛する海外ミュージシャン
日本ではJPOPアーティストとのコラボなどから、メディアでも見かけるようになったのが、元アメリカのメタルバンドのメガデス(Megadeth)のギタリストだったマーティ・フリードマン(Marty Friedman)ですね。
ハードロックに生まれ変わった「天城越え」もそうですが、演歌のこぶしをギターでここまで表現するのもすごいですね!
メガデスにいた当時も、和風の哀愁漂うギターソロが歴史に残ってますね。
Megadeth: Tornado of Souls
一方で、ロックやメタルだけでなく、ジャズで和楽器を取り入れているバンドもあります。
それがアメリカ出身の尺八奏者、ブルース・ヒューバナー(Bruce Huebner)率いるカンデラ(Candela)です。
山形の民謡、「最上川舟唄」をモチーフにラテン調のジャズアレンジは見事、尺八の音色も見事に馴染んでますね。
日本に生まれたからには、日本の伝統楽器が現代に蘇ってルーツに触れ直すきっかけになればなと思いました。